営業活動において「議事録を作る」という行為は、これまで事務的な作業と捉えられがちでした。
実際に、現場のマネージャーや営業担当からこんな声がよく聞かれます。

うちのチームでは、議事録って正直“簡単なメモ”程度なんです。
精度の高いものを作る人はほとんどいなくて…。でも営業にはやっぱりお客様との時間を優先してほしいから、無理に作成させるのも気が引けます。



まさに営業現場でよくあるジレンマですね。
議事録を取らせれば営業の時間を奪う、取らせなければ改善の材料が残らない。結果、商談内容が属人化して、チームとしての営業改善が進まなくなるわけです。
しかし、商談から議事録作成までの流れをスピード感をもって回すことが、受注確度や成約率を高めるためのカギとなるのです。
- 営業現場で議事録が形骸化する背景
- 「AI 営業」「営業 改善」が注目される理由
- AI議事録が解決する3つの課題
- 商談直後に活用できる具体的なシーン(振り返り・後追い提案)
AIを活用した営業が注目される背景
近年「AI 営業」「営業 改善」という言葉が注目されるのは、営業現場が次の3つの課題に直面しているからです。
- 情報の属人化
商談内容が担当者の頭の中に閉じてしまい、組織全体で活用できない。 - フィードバック不足
商談を客観的に振り返る仕組みがなく、個人スキル頼みになってしまう。 - 後追いの遅れ
商談後のフォローが遅れることで、顧客の温度感が下がり、機会損失につながる。



AIを活用して議事録を作成すれば、この3つの課題を一気に解消できます。商談直後に正確な記録が整い、振り返りや社内展開が容易になり、そのままフォローアップメールや提案書に転用できる。
つまり、“営業活動の質とスピードを同時に高める仕組み”になるんです。
議事録作成の基本 ― AIを活用してシンプルに
AIを活用した議事録作成は、複雑な手順を踏まなくても始められます。
ここでは実際に私が現場で提案している Google AI Studio を例に、「営業現場で使える議事録の残し方」を紹介します。
録音データを用意する
まずは商談や打ち合わせを録音します。
オンライン商談なら Zoom / Teams の録画機能、訪問ならスマホのボイスメモで十分です。
Google AI Studioにアップロード
録音ファイルをそのままGoogle AIスタジオに取り込みます。
アップロードすると音声ファイルが認識されます。
「文字起こししてください。」と伝えるだけで、文字起こしデータを作成することが可能です。
1~2について、詳細は別の記事で解説しておりますので、もしご不安な方は参考にしてみてください。


議事録を整理する指示を出す
議事録を作成する際の指示はとてもシンプルです。
文字起こしができたら、AIに以下のように依頼します。
商談の文字起こしを構造化して整理してください。
数値・固有名詞・顧客要望など、具体的な情報は残してください。
タイムスタンプは不要です。
この一文を入力するだけで、バラバラだった会話が 営業の成果に直結する議事録 に変わります。
議事録の主な活用方法
社内共有
商談の議事録を社内で即共有できることは、営業活動を組織的に進めるうえで大きな価値があります。
情報共有のスピード化
商談直後にAIで整理された議事録を共有すれば、営業担当だけでなく、
- 技術部門(開発・システム)
- 管理部門(契約・法務・経理)
- マーケティング部門
といった他部署も「顧客がどんな課題を抱えているか」を正確に把握できます。
誤解や情報漏れの防止
従来の「担当者がまとめたメモ」では、表現の仕方や理解度によって内容が変わってしまい、部署間で認識のズレが生じることも少なくありません。
しかしAI議事録なら、顧客の発言や合意事項が一次情報として残るため、誤解や伝達漏れが大幅に減ります。
実務のイメージ
- 「顧客から『来月までに試算表を出してほしい』と依頼があった」
- 「物流部門の改善要望は“在庫の見える化”が最優先」
こうした具体的な発言がそのまま残っていれば、後から部門を跨いだ動きもスムーズになります。
商談の振り返り:AIを“育成コーチ”にする
AIを活用して作成された高品質な議事録は、単なる記録ではありません。
「営業を客観的に分析し、再現性ある改善を支える育成ツール」として活用できます。
発話割合の分析
商談では「営業が一方的に話してしまう」ケースが多く見られます。
AIに議事録を解析させれば、営業と顧客の発話割合を数値化でき、会話のバランスを客観的に把握できます。
- 理想は 営業6:顧客4
- 「顧客から新しい情報を引き出せたか」が確認できる



AIが勝手に分析してくれるなら、部下を育成する役割は不要になりそうですね。



そこが落とし穴なんです。
AIはあくまで“事実を並べる”ことは得意ですが、“何を良しとするか”は指示しないといけません。
例えば『今回は新規アポだからゴールは次回アポ獲得』なのか、『提案フェーズだから条件確認』なのか。こうした商談の文脈を与えて初めて、AIは意味のあるフィードバックを返してくれます。
ゴール達成度の検証
商談には必ず目的があります。AIに「今回の商談ゴール」を追記させれば、毎回の達成度を定量的に振り返ることが可能です。
- 初回アポ:次回アポの約束を得られたか?
- 提案フェーズ:意思決定に必要な条件を確認できたか?
これにより「進んでいるのか」「停滞しているのか」を明確に判断できます。
ナレッジ共有と型化
優れた商談事例はAIで要約し、成功パターンとして社内に蓄積します。
- 部下や若手営業のトレーニング教材に活用可能
- 属人的な営業スキルを組織全体で再現可能に
発展編:精度を高める工夫
AI議事録の精度をさらに高めたい場合は、事前に以下をインプットすると効果的です。
- 商談の前提を伝える
新規アポなのか、既存深耕なのか。商談のゴールは「次回アポ獲得」か「意思決定条件の確認」か。
→ 背景を理解させることで、フィードバックがより的確になります。 - 自社の営業フローを明示する
「ヒアリング → 提案 → クロージング」といった標準的な営業プロセスを伝える。
→ これに沿ってAIが議事録を整理すれば、理想の営業型に即したフィードバックが得られる。
営業活動の後追い:AIを“加速装置”にする
商談後のスピードが、受注確度を大きく左右します。
AI議事録は「要点整理」だけで終わらせず、そのまま フォローアップメール・提案資料・CRM入力 に転用できるため、営業活動を一気に加速させます。
フォローアップメール
議事録から 要点・合意事項・次回アクション を抽出し、そのままメール化できます。
- 件名例:
「本日の打合せ内容の共有と次回の進め方について」 - 本文例:
- 本日伺った課題
- 当社でご用意する資料
- 次回確認事項
この形に整理して即日送ることで、誠実さとスピード感を同時に示せます。
提案資料のドラフト
AI議事録の「顧客課題・要望リスト」は、そのまま提案書の骨子になります。
例:
- 課題:「EC在庫のリアルタイム性不足」
- 要望:「受注から出荷までのリードタイム短縮」
- 提案方向性:「OMS導入による在庫連携+出荷指示自動化」
商談直後に提案ストーリーを起こせるため、競合より一歩先に動くことが可能です。
CRM・SFA連携
AIがまとめた要約を Salesforce や HubSpot にそのまま登録すれば、
- 次アクションの抜け漏れを防止
- マネージャーの進捗把握やPDCA高速化
が実現します。
まとめ
議事録は、これまで「記録のための事務作業」として軽視されがちでした。
しかしAIを活用すれば、議事録は 営業成果を加速させる武器 へと進化します。
- 社内共有により、組織全体で顧客対応を支える基盤になる
- 商談の振り返りを通じて、営業の型を磨き、育成コーチの役割を果たす
- 営業活動の後追いを即実行でき、スピード感ある提案で競合に差をつけられる
大切なのは「AIを導入すれば自動的に解決する」と考えるのではなく、マネージャーや営業担当が文脈を与えて正しく使いこなすことです。
AIは魔法の道具ではなく、営業チームの力を何倍にも引き出す“加速装置”なのです。
営業改善を本気で進めたい企業にとって、AI議事録の活用は避けて通れないテーマになっています。
まずは一度、商談を録音してAIにかけ、整理されたアウトプットを体験してみてください。
「記録」だった議事録が、営業活動を変える大きな一歩になるはずです。