営業とマーケティングは「別部門」として語られがちですが、両者の連携が成果を大きく左右します。
営業は単なる施策の利用者ではなく、商談から得られる顧客情報を活かして施策を改善する「改善者」でもあります。本記事では、営業がマーケ施策を活用する場面と改善に関与する場面を整理し、リソース制約下でも回せる改善ループの実践モデルを提示します。
営業活動の現場では、こんな声がよく聞かれます。
営業マネージャーせっかくマーケティングでリードを取っても、実際の商談では“ピンとこない”お客様が多いんです。



営業からのフィードバックがないから、どんな顧客層が反応しているのか分からないんですよね。
このすれ違いは、決して珍しいことではありません。
営業は施策を“使うだけの人”と見なされがちですが、実際には“改善の担い手”でもあるのです。それを認識しているかどうかで組織の成果は大きく変わります。
商談で得られる顧客の生の声や反応は、マーケティングの精度を高めるための宝の山。
ところが、営業が情報を返さなければ、マーケ施策は「打ちっぱなし」で終わってしまいます。逆に言えば、営業が“利用者”であり“改善者”であると意識するだけで、商談の質もマーケティングの成果も一気に高まるのです。
- 営業がマーケ施策をどう「利用」すべきか
- 営業が施策改善にどう関わると成果につながるか
- 中小企業でも無理なく実践できる改善ループのつくり方
イントロダクション ― 営業の役割は「利用者」+「改善者」
従来、営業は「与えられたリストや資料をもとに顧客に提案し、受注を目指す存在」として位置づけられてきました。いわば マーケティングの成果物を“利用する人” という一面的な捉え方です。
しかし、現代のBtoB営業においてはそれだけでは不十分です。
商談を通じて顧客がどんな課題を抱え、どんな疑問や反論を口にするか――その一つひとつが、マーケ施策を磨き込むための貴重な素材となります。
つまり営業は、施策の“利用者”であると同時に、現場から改善のタネを持ち帰る“改善者”でもあるのです。
実際、調査でも「営業とマーケで共通KPIを持ち、進捗を可視化する仕組みが改善ループの起点になる」ことが示されています。さらに「商談で得た顧客のリアルな声を広告やクリエイティブに反映することで、大きな成果につながる」とも言われています。
営業が「改善者」としての役割を果たすことは、単なる理想論ではなく、マーケ投資の効果を最大化し、営業効率を高めるための現実的なアプローチです。
営業が施策を「利用する」場面
マーケティング施策は、営業で成果を出すための「燃料」として存在します。
しかし、その燃料をどのように活用するかによって、商談の成果は大きく変わります。
1. リード精査
まず重要なのは、マーケから渡されるリードを鵜呑みにせず、商談化の見込みを営業自身が精査することです。
共通KPIのもとで、マーケが獲得したリードを「温度感」や「意思決定プロセス」で整理すれば、無駄な訪問や提案を減らせます。
2. トーク仮説検証
次に、マーケのメッセージや資料をそのまま使うのではなく、実際の顧客反応を試す場として商談を活用することです。顧客がどの言葉に反応し、どこで疑問を抱くのかを営業が確かめることで、仮説が現場で検証されます。
3. 商談準備シート
さらに、マーケ側が用意した事例資料や比較シートを、「商談準備シート」として営業が再編集し活用する工夫も有効です。顧客の業界・規模に合わせて少し手を加えるだけで、説得力が格段に高まります。
研究でも「スモールスタート/仮説検証を短サイクルで回す体制」が成功確度を高めると示されています。つまり営業は、施策を受け取って終わりではなく、日々の商談で“使いながら検証する実験者”なのです。
営業が施策を「改善する」場面
営業がマーケ施策を活用するだけでなく、改善に関与することこそが成果を押し上げるカギになります。現場で顧客と直接向き合う営業だからこそ、マーケ側には見えない“生の情報”を持ち帰れるのです。
1. 顧客の声をフィードバック
商談で出てくる課題や疑問、さらには反論は、マーケ施策をブラッシュアップする最高の材料です。例えば、広告のコピーに対して「それはうちの規模感には合わない」と顧客が感じているなら、その言葉をマーケ側に伝えることで、より刺さる表現に修正できます。
2. KPIを共有し改善の糸口に
営業とマーケが別々の指標を追っていると、改善は進みません。共通のKPIを設定し、その進捗を可視化することで、双方の会話が「感覚論」から「数字を根拠にした議論」へ変わります。結果として、施策の方向修正もスピードアップします。
3. 改善ループの仕組み化
重要なのは、フィードバックが属人的に終わらず、仕組みとして残ることです。営業が毎週の会議で顧客の声を共有し、マーケ担当がそれをもとに広告や資料を微修正する――こうした小さな改善の積み重ねが、最終的に大きな成果を生みます。
研究でも「商談で得たリアルな顧客の言葉を広告やクリエイティブに反映させる小さな改善が、大きな成果につながる」とされています。つまり営業は、施策を利用するだけでなく、改善ループを回す中心的存在なのです。
リソース制約下でも回せる『営業×マーケ改善ループ』モデル
中小企業においては、営業とマーケティングを明確に分けるほどの人員や予算がないケースが大半です。
営業がマーケも兼務していたり、片手間で広告運用をしていることも珍しくありません。だからこそ「理想論ではなく、最小限で回せる改善ループ」が必要になります。
1. 最小単位の役割設計
改善ループは大掛かりな仕組みである必要はありません。例えば、営業が商談で得た「顧客の声」を週1回まとめ、マーケ担当(あるいは兼務者)が広告や資料に反映するだけでも、立派な改善サイクルになります。
2. 頻度と責任者を明確化
失敗しやすいのは、「時間があれば共有する」という曖昧なルールにしてしまうことです。週次・月次など頻度を決め、改善ループの責任者を1人置くことで、属人化を防ぎます。
3. 仮説検証の短サイクル化
改善ループを大きな施策に頼らず、小さな仮説を短いサイクルで回すことが成功のコツです。研究でも、スモールスタートでの検証が成功確度を高めるとされています。例えば、広告文を1行変える、営業資料の1スライドを更新する程度でも効果検証は可能です。
このように、リソース制約下でも「小さく・早く・継続的に」回す改善ループを設計することで、限られた人員でも成果を積み上げることができます。
現場知見と「なぜこのテーマを語るのか」
ここまで「営業=利用者+改善者」という考え方を整理してきましたが、なぜ私自身がこのテーマを強く語るのか、その背景を少し共有したいと思います。
私はこれまで、インサイドセールス(IS)とフィールドセールス(FS)を統括する立場で、営業とマーケティングの仕組みづくりを支援してきました。現場に立って実感したのは、営業がマーケ施策をただ“利用するだけ”では成果が頭打ちになるということです。
例えば、ISが取得したリードをFSが商談につなげる際、営業現場の声をマーケへフィードバックせずに進めていた時期がありました。結果、広告やホワイトペーパーが顧客像とズレていき、リードの質も低下。「マーケが悪い」「営業が動かない」という不毛な責任の押し付け合いに陥ったのです。
逆に、営業会議で「顧客が本当に使う言葉」を共有し、マーケがその声を資料や広告に反映し始めると、リードの精度が目に見えて改善。営業のアプローチもスムーズになり、成果が伸びました。
この経験から私は、営業とマーケは分業ではなく“改善ループを共に回す存在”であるべきだと確信しました。
仕組みをつくり、営業が「利用者」として商談に活かしつつ、「改善者」として情報を戻す。これができて初めて、マーケ投資は利益に直結します。


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