商談前にAIでここまでできる!情報収集・競合分析の実践法

成果が出ない営業チームの多くは、商談前の準備を“なんとなく”で済ませています。

ネットで軽く検索し、30分ほどで「知った気」になって商談に臨む。結果として議論は浅くなり、商談相手から必要な情報を聞き出せずに終わってしまうのです。

一方で、成果を出している営業チームは違います。

商談前の調査や分析にしっかり時間をかけ、仮説を持って商談に臨むことで、会話を主導しながら相手の課題を深掘りしていきます。

ただし、そこには別の問題もあります。限られた人員で複数案件を抱える中小BtoB企業にとって、十分な準備時間を確保すること自体が難しいのです。

営業マネージャー

うちの若手営業は、商談前に一応ネットで調べてはいるんです。
でも調査にかけるのはせいぜい30分程度。なんとなく“知った気”になって終わってしまいます。

コンサルタント

確かに一部の社員はAIを使って準備しているようですが、人によって使い方がバラバラで成果に結びついていないのが実情です。これではチーム全体の商談力を底上げするのは難しいですね。

これらはまさに、中小BtoB企業に共通する「商談準備の非効率」の典型例です。
特に無形商材を扱う組織では、商談前の調査や分析の質がそのまま提案の説得力を左右します。

しかし今、状況は変わりつつあります。

近年のAIの進化によって、「商談前に、ここまで自動化できるのか!」というレベルに到達しました。
情報収集から競合分析、さらには次の一手の提案まで──AIが営業担当の「もう一人の頭脳」として機能する時代が、すぐそこに来ているのです。

この記事でわかること
  • 商談準備にAIを取り入れる意義と最新トレンド
  • 情報収集・競合分析を効率化する実践ステップ
  • 中小BtoB現場に落とし込む際の注意点
目次

イントロダクション ― 商談準備にAIを活用する意味

商談準備の「質」が成果を決める

営業成果を大きく左右するのは、当日のトーク力よりも事前準備の質です。

特に無形商材の提案では、顧客がまだ言語化できていない課題を引き出し、仮説を提示できるかどうかが勝負になります。

しかし現実には「時間が足りない」「形式的なネット調査で終わる」といった商談準備の非効率が多くの現場で起きています。

多忙な営業担当に追加指示をしても動かない現実

商談準備の質を上げようと経営者やマネージャーが追加の指示をしても、営業担当はすでに多忙。やるべきことが多すぎて手が回らない、勝手がわからず時間ばかりかかるというのが実態です。

結局、属人的な調査スキルに依存し、チームとしての標準化や効率化が進まないままになってしまいます。

商談準備に特化したAIの活用

近年のAIは、単なる検索の代替を超えて、商談準備を効率化するツールとして進化しています。

  • DeepResearch:公開情報やニュースをもとに、短時間で企業概要を整理
  • 質問応答:不明点があればその場でAIに質問して確認できる
  • 課題仮説生成:自社商材に合わせて、顧客課題の仮説を考えられる

これにより、営業担当は短時間で一定の質を担保したアウトプットを手にできるようになります。

「紹介」ではなく「営業担当にとっての仕組み化」

AIの最新ツールを紹介するだけでは、営業担当は動きません。
重要なのは、営業担当にとって「どう使えば短時間で成果につながる準備ができるか」という仕組み化です。
ツールを主役に据えるのではなく、営業を補助する「仕組み」として組み込むことが成功のカギになります。

石田の現場知見:落とし込みの工夫

私が現場で取り組んだ際には、まず商談準備で必要なアウトプットの型を決めました。

  • 相手の業務の特徴は?
  • 相手が興味を持ったポイントは?
  • 相手が困っていそうなことは?
  • なぜそれが起きているのか?
  • 相手に合わせた事例紹介
  • 提案できる余地は?

こうした項目を10個以下に絞り、専用シートを営業メンバーと一緒に設計しました。

取り扱う商材やサービスによって項目は変更して構いません。
重要なのは、現場に合わせて設計することです。

次に、そのシートを短時間で埋めるためにAIを活用。

  • DeepResearchで一次情報を集める
  • AIとの「壁打ち」で仮説を深める
  • 情報を整理・整形してシートに反映する

さらに、これらの手順をプロンプトにまとめ、専用AIとして提供しました。

その結果、商談準備が「属人技術」ではなくチームで再現できる仕組みとなり、提案の質を安定して高めることができたのです。

AIを使った情報収集の実践法

Step1:ChatGPTでDeepResearchを依頼する

まずはChatGPTを開き、対象企業についてのリサーチを依頼します。

このとき、単に「〇〇社について調べて」と書くだけでは不十分です。
自社サービスの概要や解決できる課題、商談の目的を併せて記載すると、より精度の高いアウトプットが返ってきます。

指示文のサンプル(広告代理店の場合)

あなたは広告代理店のコンサルタントです。
これから株式会社ABCについて商談準備をします。
当社のサービスは「Web広告運用の最適化支援」で、
顧客の課題は「広告費の無駄削減」「新規顧客獲得の効率化」です。
今回は初回商談のため、企業概要・ビジネスモデル・最近の動向・競合環境を調べてください。

こうした条件を加えることで、ChatGPTは単なる情報の羅列ではなく、商談準備に使えるリサーチ結果を出力してくれます。

Step2:アウトプットを確認しながら追加質問

出力された内容を読みながら、不明点や深掘りしたい点があればそのままChatGPTに質問します。

  • 「ABC社の主な収益モデルは?」
  • 「ABC社が属する業界で、直近の課題としてよく見られるものは?」
  • 「競合企業と比較した際の強み・弱みは?」

このやりとりを繰り返すことで、調査から理解までを短時間でカバーできます。

Step3:自社で解決できる課題仮説を作成する

リサーチをもとに、自社サービスで解決できる課題の候補を仮説として整理します。

項目課題候補①:新規顧客獲得効率の悪化課題候補②:広告費の無駄
背景既存チャネルに依存しており、新規媒体の活用が遅れているターゲティング精度が低く、成果に直結しない配信が多い
提供価値複数チャネル横断の広告運用最適化を提案できるAI分析を活用した配信改善・ROI最大化の仕組みを導入できる

実践効果:2~3時間の準備が30分に短縮

従来なら、企業調査から競合分析・課題整理までに2〜3時間はかかっていたはずです。

しかしAIを活用することで、1時間以内、慣れると30分で完了できるようになります。限られた時間で複数商談を抱える営業担当にとって、これは大きな武器となるはずです。

まとめと活用チェックリスト

記事の振り返り

営業成果を大きく左右するのは、当日のトーク力ではなく商談準備の質でした。

従来は「なんとなくのネット調査」で終わることが多く、仮説が弱いために商談が浅くなりがち。しかし今では、AIを活用することで短時間でも精度の高い準備が可能になっています。

特にChatGPTやDeepResearchを使えば、

  • 企業概要や業界動向の整理
  • 競合分析や収益モデルの理解
  • 自社商材に基づいた課題仮説づくり

といった作業を、従来の1/3以下の時間で仕上げることができます。

ただし、忘れてはいけないのは「営業の本質はお客様との対話」であること。
AIはその対話を深めるための準備を助けるサブツールにすぎません。

明日から試せるチェックリスト

商談準備チェックリスト
  • ChatGPTにDeepResearchを依頼し、企業概要・業界情報を短時間で整理する
  • 自社サービスの特徴や解決できる課題をあらかじめ指示文に入れる
  • 不明点があれば追加質問して、理解を深める
  • 出力結果をもとに「解決できる課題候補と背景」を2〜3つ仮説として整理する
  • 商談シナリオに沿って「確認する質問」「提示する差別化ポイント」を決める

この一連の流れを仕組み化しておけば、30分程度の準備で自信を持って商談に臨めるようになるはずです。

営業・マーケティングの専門家が回答します。
まずはお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

石田 星斗のアバター 石田 星斗 BtoBマーケティング・営業コンサルタント

成約率改善×営業の仕組み化を支援。商談プロセス設計、提案資料の共通化、ベンダーマネジメント、会議体運用を通じて、誰が担当しても成果を出せる体制を構築。【実績】これまでに50社以上のBtoB企業を支援し、営業力が弱いチームでも年間数千万円規模の新規案件獲得を実現。【経歴】大手コンサルティング会社やWebマーケティング会社でコンサルタントを経験後、独立。中小企業診断士・認定経営革新等支援機関。

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